統合失調症と向き合う

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岡田久実子さん
岡田久実子さん
(おかだ・くみこ)
2人娘の長女が統合失調症の体験者。治療を受けるも病名や統合失調症に関する情報がない中、娘が再発。いくつか病院を変えながら回復を目指した。親として辛い経験をするが、現在は、娘の症状も安定し結婚、育児をサポートしている。さいたま市精神障害者もくせい家族会会長として、今後の精神科医療や社会のあり方への提言をしていきたいと語る。
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9再び病院を変える

「その先生にお世話になった段階で、ま、そのアドバイスはすごく適切だったと思うんですけども、『この病気は波があるので、ひどくなることも考えられるから、1か所入院施設のある病院を探しておいて、状態が悪くなった時につながれるような、そういう心構えも必要ですよ』というふうに言われたので、実は何か所か、前もって病院をあたっていたんですね。

娘の性格的に、大きな病院で大部屋でというのは、とてもとても緊張感が強い子なので無理だろうなと思ったので、規模が小さい、家庭的な雰囲気のある病院だったら、なんとか本人も納得してくれるかなあということで、そういう雰囲気の病院が1か所あったので、万が一の時はそこに、と一応心づもりはしていたので、そこにすぐ問い合わせました。そしたら、『紹介状を持ってきていただければすぐ診ますよ』ということでした。でも、私は入院させる気はあまりなかったんですね、実はね。だけども、ま、その先生には言い訳として、状態があまりにもひどくなってしまったので、入院も考えたいので、入院施設のある病院に転院したいので紹介状を書いてくださいということで、紹介状を書いていただいて、病院を変わりました。」

●病院を探す手立ては?

「そうですねぇ、自分で探しましたねぇ。家族会の方達は、だいたい皆さん大きな病院に入院された方が多くて…。状況を聞くと、カーテンもないような大部屋だったり、なんでしょうね、ちょっと昔のイメージの精神科病院というような病院が多かったので、娘をそういうところに入院させることで良くなるというふうに、私の中でとてもイメージができなかったので、ちょっと違うタイプの病院があったらいいなということで、あちこち探しました。

タウンページもめくりましたし、医者が選んだ何か本がありますよね?ああいう本も買って全部見たりとか、あとはインターネットで調べたりしましたね。」

●新しい病院の印象

「とても家庭的な雰囲気で、待合室にいると、奥がたぶん病室になっていると思うんですけども、オープンで、奥からパジャマ姿の患者さんが、待合室の自動販売機のところに飲み物を買いに出てくるというような雰囲気だったので、こういうところだったら、娘も『休養のためにちょっと』と言ったら納得して入ってくれるのかなというふうに思いました。

(娘は)最初はね、やっぱり病院を変わることに、すごく抵抗がありました。『また一から全部話を聞かれて、もういいよ』という感じだったんですけど、ま、そこはお母さんに任せなさいということで。もちろん先生も紹介状を書いていただいているので大丈夫だと思ったんですけども、一応親としてこれまでの経過を、原稿用紙に3枚分ぐらい書きました。なぜ病院を変わったかというところを分かっていただきたかったので。それで受付で、『先生お忙しいのに申し訳ないんだけれども、大変な思いをして今日病院を変えようとしているので、これを読んでいただいてから、診察を受けたいので、すみませんが先生によろしくお伝えください』と、そんなことをしてから受診したので、あまり根掘り葉掘り過去のことを聞かれるということもなく、受診できたし、先生もとても穏やかで、『大丈夫だよー』というふうに、安心できるような声かけをたくさんしてくださったので、娘も納得して、距離はちょっと遠くなったんですけど、こっちに移ってもいいかなというような態度をしてくれましたね。」

●新しい病院での試行錯誤

「当初は、やはり自分の目で確認しないとお医者様も(薬の)合う合わないが、はっきり判断つかないので、私が合わないと思っている薬をちょっと量を増やすことで、1か月様子を見させてください、それでも改善しなければ、薬を変えることを考えましょうというふうに言ってくださって、1か月量を増やしながら様子を見たんですけども、やっぱり全然だめでした。

ひどかったのは、うちは3階建てで、3階の上のスペースに一部、屋上みたいなところがあって、そこで私が花を育てたりしていたんですけども、そこで、友達を呼んでパーティーをやるんだと言い出して、プランターの重たいのとかを自分でがんがん片づけ始めて、そこでテーブルを置いたりして、ま、すごいエネルギーだったですね、あれはね。それで、もうしょうがないから、家族身内を呼んで、そこで食事会を開いたり、あとは、ほとんど眠れない状態で、朝4時になるとパソコンの前に座って、何か日記を一所懸命自分でつけていたり…。私が、あんまり早くから起きないで、もっとゆっくり寝たらとか言うと、もう怒り出してしまって、『お母さんはそうやっていちいち私のやることに文句ばっかりつける』と言って、すごい剣幕で怒り出したりしました。

薬を飲んでいるのにそんな状態でしたが、それを本人を前にして言えないので、先生がいて、娘がいて、私がそのうしろにいてというような形で上手に先生が診察をしてくださって、娘とやり取りをして、それで娘の答えることに対して、先生が私のほうに、お母さんはどう思っている?というふうに視線を投げてくれて。で、私が『いやぁ』とか『はい』とか、そうやって娘の状態を分かっていただけるようにやっていきました。

結局、先生の判断で、『どうもこの薬は君に合っていないみたいだねぇ』ということで、『リスパダールのときには落ち着いていたんだろ?』と言われたら本人もそれは分かっていて、『はい』と言って、『じゃあ、リスパダールに戻すよ』と言ったら、本人が、『あれは辛いからもう嫌です』と言ったんです。先生は、何が辛かったかというのを分かっていらっしゃるので、『私は医者だよ?』とおっしゃって、『その辛いところは、多少薬の数は増えるけれども、僕がうまく抑えてあげるから大丈夫だよ。ちょっと試してみないかな?』と言ったら、(本人も)分かりましたということで、リスパダールに戻して、副作用止めを加えていただいて、それで治療を継続して、時間はかかりましたけれども、やっぱりどんどん落ち着いていきましたね、そうすることで。

10か月ぐらいかかりましたけれども、なんとか本来の娘に近いような状態に落ち着いてくれました。病院のデイケアにも、通いたいということで、デイケアにも通ったりして、なんとか日常生活は落ち着いてできるようなところまで回復することができました。」

リスパダール(リスペリドン):非定型抗精神病薬
デイケア:地域の保健所や精神保健福祉センター、医療機関などで、レクリエーションやSST(社会生活技能訓練)などを組み合わせることで、社会復帰の足がかりとする取り組み。

●副作用対策

「よく使われている薬みたいですね、副作用止めとして。パーキンソンの方に使うお薬です。あとは、女性ホルモンを助けるような薬ですかね、そういうものを使っていただきましたね。

そのときは躁状態が激しかったので、先生のほうで、一時的に、躁うつの方に使うお薬、その躁の状態を抑える作用とそれから躁の状態のあとに必ず落ち込む時期がどうしてもくるので、その落ち込みをなるべく少なくするというような調整をするために、テグレトールと、それからもう1種類です。2種類躁うつの方に使うお薬を飲んでいました。だから一時期はかなりの量のお薬を使っていました。でもそうすることでほんとに躁状態がだんだん落ち着いていったんですね。」

テグレトール(カルバマゼピン):抗てんかん薬、気分安定薬としても用いられる。

●現在飲んでいる薬

「実はある本で、統合失調症の人にそれ以外の躁うつの薬とかを長期にわたって使い続けるのは好ましくないという一文を、私、読んだので、これをどのぐらい使うんだろうと、実はちょっと心配だったんですね。で、ある研修会で、全然違う先生なんですけども、質問したんです。お医者様の間で、長期というのは何年ぐらいのことを想定して長期というふうに表現されるんですか?と伺ったら、『まあだいたい3年から5年ですね』というふうに言われたので、3年から5年過ぎても、この躁うつの薬を使い続けるようだったら、ちょっと先生にお話してみようかなあというふうに思っていたんですけど、1年過ぎた頃から、少しずつその薬は減らしていってくださって、今はもう一切それは飲んでいないです。

リスパダールと、やっぱり副作用がどうしても出てしまうので、副作用止めのお薬とホルモン調整をする薬、あと寝る前にちょっとまだ睡眠導入剤が必要なようなので睡眠導入剤をほんとにごく少量、というような形ですね、今は。」

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