「私は今、つくづく統合失調症という病気と出会えたと思っているんです。今までの時間の中で、症状に振り回され、混乱し、自分はおろか家族も巻き込んで、もう、ぐちゃぐちゃになった日々がずっと続いていたんですけど。今、思うのは、振り返ったら、そのときそのときは、みんな、家族、自分も含めて一所懸命生きていたんですよ。ひたすら祈ったりとか、なんとか良くならないものかと一所懸命願って頑張ってきていた。病気になったことで、失ったものというのも数多くあるんですが、それを上回るほど、得たものというのはたくさんあるんですね。もし自分が統合失調症になっていなかったら気づいてなかったことってたくさんあると思うんですよ。そういう意味で、今は、病気、この統合失調症に感謝しているという感じですね。

ほんと深いテーマですけど、人生について考えるようになりましたね。生きるってこんなに素敵なことなんだというか…。病気を抱えていても、どんな状態でも、生きていて、こんなに、今、萌などの施設や当事者活動で、自由自在に羽を伸ばして、好きなことをやらしていただいているということが、とっても有り難いですね。

あと、やっぱり人の心というかな、人間の、なんて言うのかな、在(あ)り方というか、人間ってなんてこんなに愚かなんだろうって思うし、逆に、なんて人間ってこんなに素晴らしいんだろうとも思いますしね。それは、詩を書いていくなかで気づいたことなんですけどね。やっぱり、人って面白いなあというか、いろんな人がいるから自分が磨かれていくんだなあと思えるし。こういうような考えというのは、統合失調症になっていなかったら絶対気づいていなかったなと思いますね。」

「まず経済力ですね。働けない、まあ、働かないという選択も含めて、働かないということはお金が入らない。定収入が入らないから、経済的な側面で、なんて言うか、ちょっとダメージを受けているというか…。あと、元気、100％モリモリ元気で動けないんですよね。やっぱりどうしても疲れやすかったり、何か集中しているとやっぱり頭が疲れすぎて、症状みたいなものが、ちょっと出かかったりとかね。まるっきり元気じゃないので、そういうところは、やっぱり気をつけなきゃいけないし、どうしても気を遣ってしまうところですね。

あと失ったもの…、ま、健常者としての幸せと言ったらいいんですかね、あえて言うなら。それがどんなものかわからない。健常者だからといって幸せかどうかもわからないし、それは何とも言えませんが、少なくとも健常者という、まあ、仕切りはあんまり僕は好きじゃないんですけど、病気になっていない状態というところでは、なんて言うか、失われてしまっていると思えますね。」