統合失調症と向き合う

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近藤健亮さん
近藤健亮さん
(こんどう たけあき)
1980年生まれの37歳(収録時)。25歳でIT企業に勤めていた時に発症し、精神科病院を受診し、統合失調症と診断。入院経験はなし。発症後は、障害を伏せて派遣の仕事に従事するが、うまくいかず、現在は、就労継続支援B型事業所(点字名刺の刻印作業を行っている)で週5日、事務作業に従事している。女性アイドルグループの楽曲を聴くことが好き。
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10メッセージ
Q.同じ病の方へメッセージをお願いします

「まず外に出てラインを作るということをやってほしいですね。そうすることでいつかはそれぞれに合った環境が見つかって、現状より回復するというのを念頭において治療に望んでほしいですね。

それにはお世話になる病院であるとか施設や実際に担当となった主治医やスタッフも質を見極めて、それが自分に合わなければ、ちゃんとそれを何らかの形で伝えてほしい。あとそれをするにあたっては行政、例えば精神保健福祉センターであるとか保健所、保健センター、それから市区(役所)や市町村役場の障害福祉担当部署のソース(資源)であるとか病院や施設の近くに住んでいる人の話とか実際(通院している人)の話もそうですけど、そういうことをうまく活用することですかね。

(H)病院に行っていた時というのは、それがまったくなかった。うち(家)から通いやすいというだけで選んだ部分があったので。ここから(K)クリニックに転院する時というのはまず利便性が良いとか、他の病院が休みでもやっている、たまたまやっていたということもあったのですけど。いちばん大きかったのは他に自分の周りに実際に行っている人がいて、その人は実際の担当された先生とはまったく違う先生なのですけど、こういう病院だという話があったので、じゃあ受け入れてもらえるなら1回行ってみようということになって。そこでたまたま今の良い主治医の先生と出会いがあって、今の良い方向の治療が始まったという感じですかね。」

Q.ご家族へのメッセージをお願いします

「まず、やはりいちばん大事なのは長い目で見ることですかね。批判したりとか差別したりとか偏見とかそういうのは少なくとも持ってはいけないし。とにかくもし当事者に病識がなければ家族が動いて、それで、病院とか施設とか行政関係も含めて役所関係も含めてですけどそういうラインを作って、それで本人、当事者を理解させるという努力をしてほしいですね。

自分の例で言いますと、家族というのは、最初のうちは私から病院でこうこうこうだったという話を聞いたのですね。ただ今の(K)クリニックに移った時に、一度、私の母親が主治医と話をしたいと言ったのですよ。それで主治医と実際会ってみて、この先生だったら信頼できるという部分があって。

その(K)クリニックの主治医、女医さんなのですけど、自分の中でもその女医さんにメンタルの病気を診てもらうのは最初不安だったのですね、正直。ここになる時は最初。だけど、先ほどもお話した通り導入から始まって、そういった形から入っていって、それからここはここがいけないからこうしなさいとかというふうにちゃんと患者に寄り添う形でフォローしてもらえたし。薬も必要、段階的に、これは法律で制限のかかる部分もあるのですけど、減らしていく方向で私とも話し合った上で、私の意向もあったのですけどそれを受け入れて減らしたいという思いを聞きいれてくださって……。

特に抗うつ薬が統合失調症の治療に不要であるという見解を示されたのも、病状にもよるのですけど、少なくとも自分の病状だったら必要ないということ自体も、今の主治医から告げられて初めて知ったことなので。

ただ本当にあの転院がなければ、今の近藤健亮というのはなかったなと思いますし、うちの家族もそう思っていますね。転院をきっかけに徐々に変わっていって今の近藤健亮というのがあるんだなというふうに認めてもらって。ただご家族の方には長い目で見てやはりこういう病気でもいつかは回復するんだし、できるだけ支援とかフォローというのはしてほしいなと思いますね。」

Q.インタビューにご協力くださった理由を教えてください

「まず自分は今年で発症から14年目になるのですけど、今現在の自分が公私ともに環境に恵まれて、充実した生活を送れているのは、少なくとも(昨年の)今頃(夏場〜秋口)までにいろいろ辛いこと・苦しいことを経験して、それでその空白の期間に両親あるいは主治医から叱責を受けて自分なりにも振り返ってみて、悪いのは完全に相手ではなく、自分がそういう環境的な部分に適応できなかったという気づきがあったのですね。

今まで、経験したことを受けて統合失調症に限った話ではないのですけど、メンタルの病気を持って、それなりにですけどできることがたくさんあると(いうことを)この場を通じて、お借りしてご覧になっている皆さんに伝えたいなという思いがあったのです。

もう1つは、今も作業所でやっている仕事や業務というのは、メインの作業に携わっている方は目の悪い方、(いわゆる)視覚障害の方なのですけど、その方々がどうしてもできない部分というのは少なくとも主に自分のようなメンタルの利用者であるとか知的障害利用者が中心となってやっているのですね。これは自分としての認識は、いわゆるピアサポートの前に共働作業でもあると、共働というのは共に働くという共働作業なのですね。

で、点字(名刺)というのはユニバーサルデザインでもあるし、ある意味オーダーメイドなのですね。そういったことを、自分からもこの場をお借りして自分の言葉で発信することでそれを普及させたい思いがあったのです。この部分というのは特に3年後の2020年には東京オリンピックパラリンピックというものを控えていることもあるので、さらに国際的にも広めて存在価値を大きくしていけないかなと思っています。

このインタビューもネットというツールで展開しているということもあるので、すでに自分のフェイスブックではそうしていますけど、ここでは顔を出している自分、実名を出している自分、近藤健亮という自分というのが公の場で何かを発信しているというのがずっと記録として残るのです。それは共生社会の発展というものにもつながりますし、当然世の中的にもお役に立てますし。それはメンタルに限ったことではなく、他の身体とか知的障害の部分にしてもそれぞれの立場でも当事者が自信を持って堂々とした人生を送れることにつながればいいかなと思って、今回のオファーを引き受けさせていただきました。本日はどうもありがとうございました。」

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