統合失調症と向き合う

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ペトロさん
ペトロさん
1967年生まれ、46歳(収録時)。29歳の頃に幻聴と妄想が始まったが、自分では現実のものと信じ、さまざまな機関にその内容を訴えたが解決せず、自分の聞いているものが現実であることを証明しようと精神科を受診し、統合失調症と診断される。営業マンとして働いていたが、会社を辞め、ボランティアをはじめさまざまなことを行った。2年前に住まい近くの障害者就労支援センターの存在を知り、支援を受けながら就職活動を行い、現在は老人ホームの調理場で調理師として週5日働いている。
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16メッセージ
Q.同じ病を持つ方へメッセージをお願いします

「統合失調症は、ある意味では一般的な病気なんだと思います。ですから、『落ち込むな』と言っても無理かもしれませんけれど、なるたけ前向きに、社会復帰のために、意思をしっかり強く持つということが大事ではないかと思います。

そして、自分の置かれている社会的な現実というものを、拒否しても逃げられませんので、自分の病気というもの、病気を抱えた自分というものを受け入れる。統合失調症というものに対する社会の現実というものも受け入れる、受容するということも大事ではないかなと思います。

それをしないと、仕事も見つからないと思うのですよね。批判ばかりしていても、始まらないと思うのです。で、やはり、家族とか親類とか、友達とか地域の助け合いとか、就労支援センターのような行政の支援というものを、ぜひ積極的に利用して、そういうものの中に身を置いてほしいと思います。そうすることによって、打開していくことはいっぱいあると思うのです。」

Q.病気を受け入れられるようになるまでどれぐらいの期間かかりましたか

「最初のうちは、『病気です。薬を飲んでください』と言われて、飲んでいたとしても、先生が言っていることの結果はどうなのか見てやろう、俺はやっぱり病気じゃないかもしれないと。でも、やっぱり結局、再発したりして、また薬を飲むと治ったりしてということがありましたから、そうするとだんだんに、そういうプロセスを通して、数年かけて、しっかり受け入れて…。仕事を探そうというふうになってくるまでには結局、10年かかりましたかね。

その間、修道院に行ったりとかいろいろやっていましたけれど、教会の仕事を手伝ったりとか…。そりゃあ、思いますよ。『神よ、なぜですか?』と。『なぜ僕はこんなことになったのでしょうか?』と、いつも祈っていましたね。

変な声は聞こえましたけど、神は沈黙していました…。でも、やっぱり祈っている中で、自分が受け入れていく力をもらえたということはあると思うのですよね。これは不思議なことで。それは別に、宗教的な暗示とか、宗教的な慰めだからということではないと思うのですよ。僕にとってはやっぱり、信仰があったからじゃないかなと思いますね。」

Q.医療者や医療体制に対してはいかがですか

「もう先生方もよくご存知のことだとは思うのですけれども、精神障害者は健全だった時期が長い人々が大勢いると思うのですね。そうするとやっぱり、精神障害にいまだに大きな偏見がありますし、恐れというものもいっぱいあると思いますので、『どうして僕の人生はこんなことに…』と思っている人が大勢いて、いつも悔しい思いをしていると思うのですよ。やはり僕も就労支援センターでたくさんそういう仲間に会いましたけれども、いろんな思いのたけをツイッターやメールなどで書いてくる人がいっぱいいるのですよね。『悔しい、悔しい』と言って…。

でもやっぱり、近年の障害者雇用の法律の改正などもあって、受け入れ態勢というものは変わってきていますので、ポジティブに考えられる人が増えてきたと思うのです。ですから、僕らの病気というものが、ある意味ではとても一般的なことであって、完治する可能性もあって、人生を前向きに歩んで行けば、きっと幸せを発見できるということも、治療とともに教えてあげてほしいと思います。」

Q.インタビューに協力してくださった理由を教えてください

「最初は、語るのは無理かなと思ったのですけれども。僕のような社会の片隅に、東京近郊の町の片隅でやっている者でも、体験の中でお役立ちできることがあればいいかなあ、参考になることが少しでもあればいいかなと思いまして、お引き受けいたしました。」

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