「たいへんな病気ですものね。ほんとはね、この病気にかかった方は社会全部で支えるべきなんです、かかった時点からすぐね。その責任がありますよ、社会にはね。けして1人に任せていい病気じゃない。で不幸なのは、この病気にかかったことを本人は気がつかないことね。で、誰も僕に触れてくれるなと、僕のやることは絶対やるんだということになってしまう。絶対ご本人の責任ではありません。病気がもっている性質ですよね。
なんて言うかな、病気にかかった方が、向き合ってほしいと思っていると思います。社会はどうして僕のことをそんなに変な目で見るの?どうして僕のことばっかり悪口言うの?と。病気に輪をかけてほんとうに悪く思うわけですから。やっぱり社会のほうが啓発を受けていればそれを悪く思わないわけですよね。病気が始まっているというので、たいへんだということで。本人は病識がないとしても、その病識のないこともみんなが知っていればね、『病識がないからこういうことになっているんだ、(だから)言っても聞かないね』と。そうした場合にやっぱり上手に対応する地域のシステムがなきゃいけないんですが、今、ないですよね。啓発が行き届いていないということは、社会の責任ですからね。絶対ご本人の責任じゃないんですよ。で、支援が遅れてしまう。気がついたときには強制入院になってねえ、鉄格子の中にいたとか、保護室の中にいたとかということになるんですけど。その前に本人を軽くするような手立てをなんとかしてくださいよというのが、おそらくご自分たちの振り返ったときの気持ちだと思うんですよ。
ご本人に病識がないとしても軽いうちにちゃんと支援をして社会に戻れるようにしておけば、やっぱり仕事もできるし、結婚生活ができることだって大いにあり得ますよ。そうすると友達と比較してね、こんなにまで自分落ちぶれちゃったと思わないで済む訳ね。だから、それを社会の側できちんと整理しなければならないことをご本人はたぶん言いたいだろうなあ…。」
「それからご本人が、周りの人が正しいという以前に、自分はほんとうはどう思っているんだろうということを、やっぱり社会に発信していくべきだろうと思うんです。病気があって辛いでしょう、というときには、感情が高ぶってどなってしまったり、乱暴になってしまったりしてね。あるんです、そういうケースが。怒りくるってガラス割っちゃったりね。でもその怒りをよく聞いていくと、(原因は)社会の側にあったりよくするんですよ。ひどい態度で相手が対応したり。あるいは病気の人同士のぶつけ合いになっちゃったりしてね。で、両方とも心理的な支援を受けていないのね。安定するように支えられて穏やかな気持ちでいられるような支援は何も受けていない。だからやっぱり1人1人の統合失調症の方を、大事に心理的に支える誰かがいなきゃいけないのね。責任をもって。その方は転勤があったりなどしても、ちゃんと引き継ぎを上手にして、そういう意味で一生涯その方を無事に生きていけるようにお世話しなくちゃいけないと思うんですよね。それがないから、ご本人が発言したくても発言できないのね。」
「本人が発言するためには、心の安定、それから冷静な判断力、あるいはいろんな情報、これがいっぱいないと駄目ですよね。それをどこかでご本人たちに、訓練と言うとおかしいけど、学習できるような場所が必要ですね。それから自分の意見はちゃんとまとめて自分で自分のことを内省するというか振り返って、自分で洞察して、自分の本当の願いを言葉にしてちゃんと社会に提示できるような訓練が必要ですよね。
心の中にある本当のその人の願いとか健康で生きたいという思いとかを上手に言葉にして社会につなげていってくれるようなことを、一般的に社会でやるってことが必要なんですが、そういう体制がないというのは、本人に代わって言ってしまいますと、とても残念だと思う。だからそういうことを私たちに提供してくださいよということを社会におっしゃったらどうかなと思うのね。ご自分の関わりのある場所で。しかも判断がちゃんとできるように情報をいただいたり、それをどう判断したらいいか教えてもらったり、それを言葉にするにはどうしたらいいか、どういうところでそれを発言していけばいいのかを、ちゃんと筋道立てて教えてくださいと。と同時に、社会に向け、今、自分の言えることでいいから伝えていくことが必要だと思いますね。で、この精神(障害)当事者の会のリーダーがどんどん育ってくるような体制が地域に整えていかれないと、駄目でしょうね。」