統合失調症と向き合う

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Eさん
さん
(匿名希望)
1978年生まれ、31歳。高校時代からこころの不調を感じていた。東京にある大学に進学し、大学2年生(20歳)のときに精神科を受診。数か所の病院に通院し、何度か入退院を繰り返す。10年ほど東京で暮らし、4、5年前に実家に帰る。現在は、定期的に通院しながら、一般就労をし、安定した生活を送っている。現在は両親と同居中で、将来は一人暮らしを計画している。
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11一般就労までの経緯

「(仕事は)今年(2010年)の5月からです。ハローワークに精神科の患者さん専用の窓口がありまして、そこの人ともとから知り合いだったものですから、ハローーワークに求人があった時点で、紹介してもらいました。(給料は)年金と合わせて、まあ実家暮らしなのでなんとかというぐらいですね。

両親は、やっぱり私が入院していたときとかすごく心配そうで、つらそうでしたね。で、私が少しずつ病院から離れていって、地域で生活をしていくようになって、そしてお給料をもらうようになったりしたときは、それまでいつもけんかばっかりだった家族だったんですけど、みんななんかニコニコして、おいしいものを食べたりとか、ちょっと一緒にお酒を飲んだりとか。前まではほんとうに親子関係がひどかったんですけど、少し柔らかくなったかなって思います。」

年金(障害年金):ここでは障害者向けの年金のこと。病気やけがなどによって、一定程度の障害の状態になった人に対して支給される年金のこと。障害の程度に応じて支払われる金額が異なる。

●病気の仕事への影響

「特殊な職場で、NPO法人で若者の支援をしています。引きこもりとかニートとかの支援を主にしたいんだけどもまあ別のことを(も)している、そういう法人にいます。社員が理事長と私しかいません。そういう状態で、理事長は私のことをすごく理解をしてくれますが、今、職業訓練を一般の人向けにやっているんですけど、その職業訓練の学生さんとか先生方には私の病気はクローズです。そのためにですね、学生さんと一緒にごはんを食べに誘われたときに行ったら、もう緊張してしまって、手が震えて、箸も持てなくなって、『ああ、もう病気のことがばれる』と思って、すごくつらかった時期もありましたし、普段でもやっぱりお弁当を一緒に食べるのが苦痛だったりとか、薬を隠れて飲まなきゃいけなかったりとか…。別に隠す必要はないのかもしれないけれど、やっぱりどこかに後ろめたさはあるんだろうなって思っています。」

NPO法人:NPOは、「Nonprofit Organization」あるいは「Not-for profit Organization」の略。平成10年(1998)施行の「特定非営利活動促進法(NPO法)により法人格を認証された民間非営利団体。法的には「特定非営利活動法人」という。
ニート:仕事につかず、就学もせず、就労のための訓練も受けていない人、「NEET;Not in Employment, Education or Training」の略称。1990年代末にイギリスで生まれた造語。

●仕事の体調への影響

「最近、やっぱり仕事をすると、病気で苦しいだけの疲れと仕事をしているときの疲れは違うんですね。病気の疲れは、ほんとに病気の疲れがあるんですけど、仕事をしている間は仕事のことを考えているので、デイケアと一緒というかそれ以上なんですけど、ストレスの感じが違って…。

そうですね、仕事のストレスは他の一般の方々と同じストレスだと思うんです。でそっちのほうにばかり自分の頭がいっているので、疲れが(病気のとは)違うんですね。で、やっぱり早く寝るように眠くなったりするし、休みの日をすごく楽しもうとするので。

それで薬の効き方が変わってきたり、頓服の種類が変わってきたりとかしています。仕事をしているときは、まず仕事場から離れられないので、かえって頓服を増やすときもあります。頓服を飲んで仕事をこなせるならば頓服を飲んでもいいんじゃないかと。ただ、それ以外のときにはやっぱり薬は少なめに、いざというときにだけ頓服に頼りましょうというふうにやっています。」

●症状悪化時の対処

「抗精神病薬や抗不安薬の筋肉注射があるんですけれども、どうしても具合が悪いときには、病院に行ってそれを打ってもらいます。どんなに自分が、例えばパニック状態になって叫んでいても、注射を打てば取りあえず寝てしまうので、薬ですけど、それでだいぶすっきりするんですね。なので、例えば次の日仕事なのに前の日にパニックになってしまったとかそういうときに注射を使いますけれども、基本的にやっぱりそういうものには頼りたくはないと思っています。

ただ使い分けが大事なのかなって。絶対注射をしてはならないとか、絶対頓服を飲んではならないとか、『ねばならぬ』という考えではなくて、もうちょっと柔軟に物事を、別のことにしても一緒ですけど、考えられたらなって思います。

そうですね、周りから見てもハラハラするみたいですけど…。『なんだかんだ言いながらも、あなたはやっているよね』と周りから言ってもらって、そうだなって(自分でも)思っています。」

●休日の過ごし方

「休みの日は、前は、デイケアに通っていた時代は、土日がすごく苦痛で、もう気が紛れないものですから自分の部屋に引きこもっていました。動けなくなるぐらい落ち込んでベッドの上で泣いていたんですけど、それから少しずつ作業所に行きだしたり、一般就職してからはですね、やっぱり休みの日がすごく貴重で楽しくてうれしくて、あちこち買い物をしたりドライブをしたりしています。

そうですね。いろいろ人から言われますが、今までできなかったこと、同じ世代の人達がやってきたことを、今、私はやっているんだなっていうふうに思っています。」

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