統合失調症と向き合う

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渡辺真五さん
渡辺真五さん
(わたなべ しんご)
1982年生まれの33歳(収録時)。中学1年生の時に強迫性障害、その後統合失調症の症状が出て、16歳の時に診断される。一度の入院経験がある。現在は、高校卒業と大学入学を目指して勉学中。ケースワーカーになるという目標ができた。症状はまだ不安定だが、そのような状況でも毎日を過ごしている当事者の実際を知ってほしいとインタビューに協力。ギターを弾くことが好きで、時々、演奏している映像をYouTubeに掲載している。
渡辺さんのブログ「人生のブログ 統合失調症患者のアールブリュットhttp://shingo1621.blog.fc2.com/
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7メッセージ
Q.同じ病の方へメッセージをお願いします

「当事者の方へ、僕も今苦しみながらお話ししています。強迫性障害に苦しみながら、そして副作用に苦しめられながら、よだれが溜まりながら、お話ししています。でもたった一つだけ短い言葉ですが、伝えたい言葉があります。『死ぬな』、以上です。」

Q.ご家族へメッセージをお願いします

「当事者のご家族やお子さんへお伝えしたいのですけど、必死で生きています。それを支えなくてもいい、だけど必死さを一緒に感じてほしい。そして一緒に喜びを感じてほしい。それが患者さんにとって幸せだ。ですからなるべく手をとって一緒に歩いてくださいという感じです。

親御さんとか患者さんに接する人のためにひと言お伝えしたいのですけど。ま、精神医療を全部勉強しないと患者さんは理解できなくて、だからそれこそ、30冊・40冊勉強しないと無理だと思います。だから、家族会1回、2回行きましたとか、患者さんが統合失調症なら統合失調症の本を1冊読みましたでは、まったく理解できないと思います。

私見ですけど、健常者の方は戦うために生まれたというか、戦士のような感じがして、障害者さんはお坊さん、僧侶のような感じがするのですよね。で、ギフテッドとかそういうこともありますけど、でも、一言で言えば戦士と僧侶で成り立っていて、この世の中、健常者という方が8割方であり「戦士」で、2割の方が精神障害者と言われる「僧侶」だと思うのですね。

生き方としても、そうで……。だから健常者と比べると障害者となりますけど、健常者さんは、結構、僕の印象なのですけど、自分のことしか考えなかったり、なんだろうな、すごく好戦的だったり、名誉とか権力を求めたり、それはなんだろう、哲学が足りなかったりするのです。でも、障害者さんは真理を求めたり、ユーモアのセンスがあったり、優しかったり、粘り強かったり、名誉と権力を求めなかったり、あと、欲がないし。だから、まあ、紳士な性質なのですね。

そして、一番の特徴は、利他、相手のために尽くす、自分が不幸になっても相手のために尽くすという特徴があって、それは感じます。僕、健常者の時は、小学生までは、人がいくら不幸になっても自分さえ幸せならそれでいいと思っていて。何もかもが思い通りになっていたので、自分が神様だと思っていたのですね。で、自分の手の中でこの世が動いていると思っていて。だから十人十色を否定していたし、親しき仲にも礼儀あり、も否定していました。障害を持ってから、すごく思うのは、いくら自分が不幸になっても、人を幸せにしたいと心から思えるようになったり、十人十色だし、親しき仲にも礼儀ありだし。強く思うのはなんだろうな、なんて言うか、とにかく人に尽くしたい、人を幸せにしたいという思いが増しました。

よく、ネットにも出ているのですけど、視力障害の方の杖を折ったり、見えないのに外を歩くなということはあるのですけど、でも、障害を持って、障害を持つ前は僕もそう思っていたのですけど、障害を持ってからは、身体障害者の方とか、知的障害者の方とか、僕と同じ精神障害者の方とかを助けたいと思えるようになったのですね。で、目の見えない方が赤信号に出るようになると、『赤ですよ』と軽く伝えたり、知的障害者が車から降りてくると心の中で『がんばれ』と思ったり。そして精神障害者の方、今(も)まあまあ偏見があるのですけど、ナイフを持ったら暴れるとか、大声出すとか。また学校の校長先生が言ったように、そういう大声出すとかのイメージがあるのですね。でもそんなことはないし。

そうやって考えると、人間らしさで考えると、精神障害者とか障害を持って不幸になっている人のほうがよほど人間らしいと思えるのです。傷ついたからこそ分かるものがある。それが一生幸せに生きればそれで幸せだと思います。だけど、不幸になるからこそ、見えるものが、景色とかがあるのではないかなということはあります。負け惜しみと言われたらそれでもいいし。でも、きっと何かあると思う。そうでなければ、死んでしまうし、自殺しかなくなってしまうのですね。」

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