統合失調症と向き合う

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石橋仁美さん
石橋仁美さん
(いしばし ひとみ)
東京工科大学医療保健学部作業療法学科 講師
帝京平成大学大学院情報学研究科情報学専攻を修了、2000年〜2002年聖マリア病院リハビリテーションセンター、2002年〜2005年倉光病院に勤務、2005年に帝京大学福岡医療技術専門学校、同大学福岡医療技術学部に勤務し、2008年〜2010年首都大学東京大学連携支援室特任助教となる。2010年に東京工科大学医療保健学部に入り、2018年1月から現職。専門は精神障害作業療法学、化粧行動。2011年頃から化粧品会社と共同で化粧による生活支援プログラムを開発し、広めている。共著で「生活と化粧を関連づけた社会参加支援プログラムの開発に関する予備的研究、日本作業療法研究学会雑誌、2018」など。
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3化粧による支援プログラム“SSPC”について
Q.化粧による生活支援プログラムとはどういうものでしょうか

「生活と化粧を関連づけたプログラムで、SSPC、略語で、Supporting Social Participation through a Cosmetic Programという名称なのですが、作業療法士の視点で考えられた、化粧の社会参加支援プログラムになります。もともと作業療法士の私だけでやっていたのですけれども、難しい点がたくさんありまして、これはもう化粧の専門家と一緒にやったほうが良いプログラムができるのではないかと思いまして、カネボウ化粧品と花王と東京工科大学と首都大学東京の4社による共同研究で作られたものです。

作業療法の目標ですけれども、よく、何かを作ったりといったイメージがあって、これが何の目的なのかというふうに思われる方が多いと思うのですけれども、対象となる方が、日々の生活の中で活動に参加できるようになることが目標でして、その方の大切な生活の行為が、その方が満足してできるようになることが、とても重要になってきます。その生活行為というものを私達作業療法士は“作業”というふうに言うのですけれども、作業には、手段としての作業と目的としての作業というものがあります。

手段としての作業というのは、例えば、何か物を作っていると、幻聴だったり妄想だったりがあるのがちょっと気にならなくなって、それをするのに集中して、何か楽しい気分を味わうことができるとか、あとは、その作業を通して、人と、何もなければ話をすることが難しいけれども、何かを作りながらとか何かしながらであれば、人と話すのがちょっと楽になるという効果を期待するものが、手段としての作業になります。

ただ、手段としての作業というのは、幻聴が気にならなくなる、集中力だったり人との交流とかそういったものを期待するのであって、物作りが生活の中でできるようになることを目的とはしていないのですね。であれば、その方の趣味となるものをやって、趣味が退院しても続けられるようになる。それが目的としての作業になります。その方のやりたいこととか目標ができるようになるためには、やはり手段としての作業だけではなくて目的としての作業がとても大事になります。

それが人によって、たぶん違うのですね。例えば料理をするということが、自宅に帰っても必要な作業でしたら、自宅に帰ってできるように、作業療法で料理を訓練するというのは目的としての作業です。ただ楽しみのためや集中するために好きな料理を作ってみる。そういった断片的な目標であれば、それは手段としての作業で、次にその生活の中に取り入れられるかどうかというところまで支援するのが、目的としての作業になります。

化粧に置き換えてみますと、化粧をして気分が高まるとか、化粧をして、細かい作業なので手先が器用になるとか、そういったことだけではなくて、日々の生活の中で化粧ができるようになるということが、とても大事なのですね。ですので、SSPCというのは、日々の生活の中で化粧を取り入れられるようになることを目的として開発されたプログラムです。」

Q.プログラムの構成を教えてください

「SSPCは、今、作られているものは全体で8回あります。一般的には1か月に2回あるので、4か月間でワンクールなのですけれども、その中で毎回、テーマがあるのですが、そのテーマに沿って、1回のプログラムで前半に学習会をして、後半は化粧の実践というふうに、2部構成になっています。それを何回か重ねていって、7回目ぐらいに、お化粧をして何かやってみたいこと挑戦してみたいことに、全員で一緒にやってみるというようなプログラムになっています。

SSPCの構成

その学習会の特徴ですけれども、プログラム名にある通り化粧に関連した生活の学習会をします。ただそれが、私達が一方的にお話しするのではなくて、みなさんで生活を振り返って、みなさんで良い方向を考えていくというような内容になっています。例えば、お化粧をする、したいというかきれいになりたいということを目的に、たぶん参加されている皆さんですので、お化粧を施すだけではなくてやはりその下の土台となる肌が健康でなければならないのですね。

肌が健康であるということは、例えば、睡眠だったり食事だったり運動だったり、一般的に体が健康になることが肌に良いということなのですね。ですので、肌に良い睡眠はどういうことなのかだったり、肌に良いお食事とはどんな食事なのだろうとか、運動はどんなふうにすれば良いのだろうとか、今やっていることを振り返ったり、理想的な生活リズムを一緒に考えていくような学習会をしています。

SSPC プログラムの構成
  内 容
第1回 初期評価
[学習会]生活の中での普段メイクの確認
[実 践]オンメイク
(SSPCでは、普段の化粧顔に少し化粧を足すことをさす)
第2回 [学習会]健やかな肌と生活との関係
[実 践]スキンケア
第3回 [学習会]美しい肌のための運動とリラクゼーション
[実 践]ベースメイク
第4回 [学習会]第一印象とポイントメイクの関係
[実 践]ポイントメイク ①アイメイク
第5回 [学習会]「自然で美人なお化粧仕上がり」と社会生活との関係
[実 践]ポイントメイク ②眉&口紅
第6回 [学習会]趣味を通じた様々なシーンでのお化粧
[実 践]T.P.O.に合わせたお化粧
第7回 メンバーでお出かけ
第8回 プログラムの振り返り&修了式
最終評価

一番最初私がやっていた支援は、お化粧の方法をお伝えするだけだったのですね。そうすると、みなさん言われるのは、やはりシミが気になるとか、(それを)どうすればいいんでしょうかとそういった、食事のこととか運動のことを気にされずに、何か方法を知りたいというふうにおっしゃるのですね。そういった肌のことを気にするには、やはり日頃の生活を振り返らなければならないので、学習会も入っています。

振り返るプログラムですし、それは数人のグループで話し合うのですね。紹介するのですよ、私はこういうことをやっていますとか。で、より良くするためにはどうすればいいでしょうと意見を言い合うので、他の方のやっている良いことを取り入れたりということもありますね。」

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