統合失調症と向き合う

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石橋仁美さん
石橋仁美さん
(いしばし ひとみ)
東京工科大学医療保健学部作業療法学科 講師
帝京平成大学大学院情報学研究科情報学専攻を修了、2000年〜2002年聖マリア病院リハビリテーションセンター、2002年〜2005年倉光病院に勤務、2005年に帝京大学福岡医療技術専門学校、同大学福岡医療技術学部に勤務し、2008年〜2010年首都大学東京大学連携支援室特任助教となる。2010年に東京工科大学医療保健学部に入り、2018年1月から現職。専門は精神障害作業療法学、化粧行動。2011年頃から化粧品会社と共同で化粧による生活支援プログラムを開発し、広めている。共著で「生活と化粧を関連づけた社会参加支援プログラムの開発に関する予備的研究、日本作業療法研究学会雑誌、2018」など。
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1化粧による生活支援のきっかけ
Q.なぜ精神疾患の患者さんへの化粧による生活支援を行うようになったのでしょうか

「作業療法士になる前、精神科病院の実習に行った時に、(患者さんに)担当でつくのですけれども、その方が女性だったのですね。その方に作業療法のアプローチを考えていったりするのですけれども、職員の方からは、身だしなみが不十分だとか、そういったこと(身だしなみ)に興味がないという評価を受けていたのです。たしかにその方も、作業療法に行かなかったり、ずっと病室で寝ていたり、外に出ることが億劫(おっくう)という方で、もちろん寝て過ごしているので、起きた時には、髪の毛がちょっと乱れていたり、顔を洗うことも億劫だったりという方だったのです。

まずお話からしようと思いまして、彼女と女性同士の話をする中で、お化粧とかおしゃれの話が出てきて、『じゃあ、ちょっと実際にお化粧をしてみましょう』ということで、お化粧をしてみて、髪型を整えてみてというふうに、かなりきれいになられたのですね。そうすると、やはり明るくなったような表情をされて、ちょっと誰かに見てもらいたい、誰かに何か言われるかしらというような感じで、作業療法に行ってみたり、スタッフから良い評価をもらいたいというような振る舞いをされたり……。あとは廊下にある鏡を1回1回見に行ったりと、積極的な行動が見られるようになったのですね。

もちろん私も最初は、身だしなみに興味がないのかなというふうに思っていましたし、スタッフの中でもそのような評価だったのですが、『果たして本当に興味がなかったのかな』というふうに疑問を持つようになりました。実際に作業療法士になって、精神科の病院で働くようになりまして、それをちょっと調べてみようと思いまして、アンケートが可能な女性に、おしゃれに関してアンケートを取ったのですけれども、多くの女性が、『おしゃれに興味がある』ということ(回答)でしたし、あとは化粧のこういったプログラムがあったら参加したいですかという質問には、『参加したい』という方が多かったのですね。

その中にも、歯みがきをされていなかったり、顔を洗うこともされていなかったり、髪の毛もボサボサだったりという方もいらっしゃったのですが、みなさんが『おしゃれに興味がある』というふうに言われていたのです。ですので、女性にとって、やはりお化粧やおしゃれというのは、非常に奥深くて、非常に重要な生活の行為なのだなと思ったのがきっかけです。

(化粧による支援を)やるようになったのは、15年ぐらい前でしょうか。もちろん他の作業療法もやったのですけども、女性のおしゃれ、化粧について注目しながら作業療法をやってきました。」

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