精神障がい者共同作業所 ひあしんす城北(じょうほく)
(所長 臼井良夫)
「ひあしんす城北」は、心の病を体験した方々が自分の住む町で暮らすことを支援することを目的に平成10年(1999年)3月に開所して、今年2009年(平成21年)で11年目にあたります。
精神科の病院に勤めていた看護師が独立しようということで始めたんですね。その方たちは、地域と病院との違い、(その間に)非常にギャップがありすぎることから退院してすぐに地域で暮らせる(の)かということに非常に疑問を感じていた。今まで患者だった人が地域に出たときに地域の生活を忘れている人が多いんですね。その人たちをいかに支援するかということで、立ち上げたところです。
ここは小茂根4丁目、環七(環状七号線)からちょっと入ったところにございます。利用されている方は、今、35名いらっしゃいます。別組織ですが、グループホームがございます。ここ(グループホーム)には1名の職員とまた非常勤で代替(だいがい)世話人が1名。作業所とグループホームを合わせて全部で6名が勤めています。
どんなことをやっているのか。まずは作業所のほうからご説明します。
活動:受託作業
作業所のほうは、まずは軽作業をやっています。今、障害者の自立支援法がどうなるかわかりませんけども、そのための準備を2年間、しっかりやってきました。今までは1社2社ぐらいしか仕事をいただけなかったんですが、今、全部で5社からいただいて、常時仕事が途切れることはございません。
活動:演劇(身体表現)
それ以外に「ひあしんす城北」の特徴として、演劇、身体表現をリハビリテーションの形でやっていることが第一ですね。地域のことを知ってもらって生活ができるようにしたい。自分で生活できるように、部屋に閉じこもるということをしないようにということで、来ていただいて作業するだけじゃなく、来ている仲間とコミュニケーションを取らせてあげたい。それが一番大きな課題だったということですので、他の人たちとうまく話し合いができるように身体で表現する、言葉で表現することができるようにと、演劇を取り入れるようになりました。
(演劇は日本大学芸術学部の戸田教授から指導を受けています)
(日本大学芸術学部演劇科教授 戸田宗宏氏)
7年ほど前に「ひあしんす城北」所長の臼井よし子さんが、私共の大学に訪ねて来られまして、精神障害者のこころのリハビリに演劇を取り入れていきたい、そのために少し専門的に演劇を指導していただけないかというの(依頼)がそもそものきっかけでした。私も、忘れられた機能というか喜怒哀楽、そういうものを表さない人たちに演劇活動を行っておりまして、実際のそういうフィールドワークの中で私どもの大学で協力できることは喜んで協力しようということで参加することになりました。
はじめは、なかなかお互いにこころが通じ合えないというか、目線が合わないとか、思っていることをうまく話ができないとか、そういう状況だったんですが、やはり一緒になって演劇を通じる中でだんだんとお互いに信頼関係が出てきたということ、それがやっぱり1つ大きな前進だったろうと思います。
特に「ひあしんす城北」の演劇の良さは、スタッフの皆さんがとても演劇が好きなんですね。そういうスタッフの皆さんと一緒に芝居づくりをするということが非常に大きな効果を生んでいるのではないかと思っております。
また演劇の力の1つとして、「もしもの仮定」というものがあります。もしも自分がそういう役だったら、ということを経験するということが、人間を観察したり探究したりというきっかけになっていく。自分がその人物になりきって演じるということが、かなり効果をもたらす要因ではないかなというふうに感じております。
(メンバー 西村有紀)
「ひあしんす(城北)」には4年通所しています。お芝居を始めたことによって対人関係がうまくできるようになりました。それからコミュニケーションが以前より取れるようになってきました。演劇はとても楽しいです。演劇はたくさんの人たちでつくっているので連携を取ることが身につきました。いろんな啓発活動を1つの目的として行っているので、精神障害者の差別や偏見がないようにがんばってやっています。
(所長 臼井)
本格的にそれ(芝居)をやり、平成11年(1999年)から実際にクリスマス会などで発表しまして、平成13年(2001年)からは実際に板橋区成増の施設アクトホールなどをお借りして大々的に発表(2004年12月17日「屋根の上のヴァイオリン弾き」を公演)して参りました。ところが(障害者)自立支援法ができて、そちらに移行しないといけないということで一時演劇もやめてしまいました。
今、障害者の自立支援法が施行されても移行できる準備が整いましたので、今度は演劇も少しずつはじめていこうというのが、今年の課題になってきています。
(公演予定の演劇「あらしのよるに」の稽古中。2009年12月11日に作業所で公演します。詳しくはホームページをご覧ください)
障害者自立支援法:「保護」から「自立」に向けた支援の法律。2006年4月1日から順次施行
(スタッフ:実習生 大泉圭亮)
活動:水曜日5つ星委員会
「ひあしんす城北」のきわめて新しい活動として、昨年(2008年)の5月から水曜日5つ星委員会と言いまして、当事者の方が中心となるグループ活動を行っております。
(メンバー 吉本薫)
私たちは「ひあしんす城北」の水曜日5つ星委員会と言います。昨年の5月から活動を始めた地域啓発を行う当事者グループです。今まで大学での講演活動や実習に来た学生さん達に精神障害の体験発表を行ってきました。それから最近では週に1回体験を語り合うミーティングの場を設けて、お互いの体験を共有する場にもなっています。
(スタッフ:実習生 大泉圭亮)
当初は地域啓発活動と言いまして、地域の方々や看護学や福祉学、作業療法学とかを教えている学校などで体験発表をすることを目的にしていたんですが、それもいろいろ変遷しまして、今は、自助活動の場となっています。ほんとうに作業だけをする作業所とは違いまして、いろいろな会話、自分達の悩みや体験を共有するときにやっぱり私と同じような体験をした人がいるんだって思えたりとか、今、困っていることって結構似てるなって感じることによって、回復につながっているということがこの5つ星委員会の一番良い点ではないかなと私は思っています。
またこの活動も広がりを見せていて、いろいろな活動の実行委員、例えば何か行事をするときのリーダーシップをとるというのも5つ星委員会が積極的に担っています。
活動:みんなのお手伝いをし隊
もうひとつは「みんなのお手伝いをし隊」と題しまして、地域貢献の活動をしています。通所される方が必要とする施設であることは第一条件ですが、地域の人に役立つ、地域の人のために活動ができる、地域の人からもこの施設はあってほしいという施設でなくては、これからは生き残っていけないと思います。そういうことをメンバーの皆さんと話し合いまして、地域で暮らしている方のちょっとしたお困りごとを解決したいということで、1回100円をいただいて、簡単なお手伝いをしています。
主なターゲットは、高齢者の方々ですね。高齢者の方々というのは介護保険サービス外で考えても、例えば、家の蛍光灯を変えるとか、上の高い荷物を下に下ろすとかというのは、じつはリスクの高いことで、案外、電気(電灯)とか切れたままにしている方も多いと聞いています。こういう活動は東京都の中でも社協が先駆的に取り組んでいるんですが、社協だけに頼むんではなくて、地域に密着したNPO法人という形でやっている「ひあしんす城北」がこういう活動に参加するということは非常に価値のある活動ではないかと思っています。
気持ちいいですね、みんなに喜んでもらえるところが。 僕は鎌で葉を取って、なんていうかな土を上あげていく?それが僕にとっては合っているのかなと(思います)。面白いですね、やっていて。
活動:学生の実習受け入れ
(所長 臼井良夫)
あとは、ここに看護系の大学生の方に来ていただいて、ボランティアでなくて実習をしていただいて、地域で障害をもった方がどんな生活をしているのか、その現場を見ていただいて、今度はみなさんが病院で働くときに、地域に出られるということまで想定して働いていただきたいということを目指して、できるだけ多くの方に来ていただくことをやっております。
最後に全員で「はりきってやっています。オー!!」
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