統合失調症と向き合う

体験者の声 医療者・支援者の声 家族の声 私たちの活動紹介 イベント おしらせ
岡崎 祐士さん
岡崎 祐士さん
(おかざき・ゆうじ)
都立松沢病院 院長
1943年熊本県生まれ。東京大学医学部卒業。長崎大学助教授、三重大学教授などを経て、現在、精神科病院ながら内科・外科等の諸科を有する東京都立松沢病院院長として精神科医療に従事。日本統合失調症学会理事長、日本精神神経学会理事なども務めている。
movieImage
<<  1  2  3  4  5  6  7  8  >>
1統合失調症とは?

「統合失調症は、従来は精神分裂病という日本の病名でしたけど、適切じゃないということで統合失調症に数年前(2002年8月)に変わりました。統合失調症は、なかなか説明が難しいんです。ご本人がどのようなご体験をするかということをまずお話しますと、今まで自然にできていたことがなんとなく以前のようにできない。ひとつひとつが意識されてしまうというのでしょうかね。また気分も従来の静かで安定した心境ではなくて、どうも落ち着かない、自分で持て余すような感じがしてしまうとか、なんとなく周囲がざわざわと落ち着かない、緊張を強いられてしまうような、自分に関係がありそうな騒がしい感じがしてしまうというふうに体験をされると、非常に気になる、従来意識しなかった周囲と自分の関係がしだいに大きな関心になってくるようですね。で、自分自身をうまくコントロールできなくて、その結果として、周囲になんか引っ張られているよう、周囲に影響されているような、あるいは圧倒されるような感じがしだいに出てきましてね。そうしますと自分の気持ちも、考えもうまくコントロールできないし、非常に周囲に引きつけられて自分の考えがまとまらない、気が散ってしまうといったような体験をされるようですね。そうこうしていると周囲がなんとなく自分にとって悪意があるんじゃないか、意地悪を感じるようになってきて、自分を非難するような雰囲気だけではなくて、他人の声まで聞こえてしまったりして、うまく自分をコントロールできなくて、どうしていいかわらなくなってしまう。非常に取り乱してしまって、感情的に精神が不安定になって、ついいらだってしまって怒ったり、ということも起こるようですね。ご本人の体験されることに沿って申しあげますと、そういう状態を来たすのが統合失調症だろうと言っていいかもしれませんね。」

●統合失調症が始まるとご本人が困ること

  • 今までなんとなくできたことが以前のようにできない。
  • 気分が不安定で落ち込むようになった、自分でも持て余す。
  • 気持ちが散る、集中できない、考えがまとまらない、落ち着かない、寝付けない、目が覚める。
  • 周りがうるさい、騒がしい、音が強く響き、気になる、音や光、人間にふいに出くわすとびっくりする。
  • なぜか気圧される、静かで安全なところがない感じ、意地悪や悪意が先回りしてある。
  • 音や声が頭の中でも響く、声は自分のことを知っているようだ。
  • 何か大変なことが起こりそうだ、どうしていいか分からない……、叫び出したい。
Q.発症しやすい年齢はあるのでしょうか?

「思春期から成人、大人の前期と言いますか、ちょっと段にピークがございますが、男性と女性でも少し差がありましてですね、男性のほうが、20歳とか22歳、23歳、女性の方はそれから3〜5歳遅れたところにピークがあると言われています。だいたいそういう印象を私共は持っていますね。」

Q.家族は、日常でどのような変化を感じるのでしょうか?

「ご家族の方は、今まで一緒に食事を和やかにしていたものが、緊張と言いますかね、自然ではない感じになってきまして、食事中にその患者さんがなんとなく従前と違って不機嫌な感じになってきたり、あまり口をきかないで、もくもくと食事をして、すっと席を立ってしまったり。ご両親の立場から言いますと、子どもに気楽に話していたのがなんとなく話しかけにくくなったなあと。で、そういう目で見るとなんとなくよそよそしく見えてしまう。それから部屋での様子を見てみるとカーテンを閉め切ったりして、あまり外出をしなくなったとか、音がするとちょっと過敏のようでびくっとしたりといった様子が見られるとか。ということでご家族はしだいに腫れ物に触るような感じになってしまうということがあるんですね。そうこうしているとちょっとした会話やいろんなきっかけで不機嫌になったりして、ものに当たったりすることがあるものですから、接し方がわからなくなって、ご家族も困惑してしまうことがございますね。子どもさんの心がちょっと自分たちから遠のいたようにご家族は感じてしまうということがよくご報告されますね。」

●統合失調症が始まるとご家族が困ること

  • 食事中口数が減り、沈んだり、不機嫌になってきた。
  • ものの言い方がぶっきらぼう、決めつける。
  • 話しかけにくい、よそよそしくなってきた。
  • 外出しないで部屋のカーテンを閉め切っていたりする。
  • 音や声に過敏になり、びくっとしたりする。
  • 腫れ物に触るようにおっかなびっくりに接するしかない。
  • 子どもの心が遠くに行ってしまったようで分からない、不安でもどかしい。
  • ときに荒れる、物にあたる、親にとっても怖いときがある。
  • どこか悪いのではないか、相談に行こうにも嫌がる。
Q.統合失調症は、社会で認識されているのでしょうか?

「改善してきたけれども基本的にはまだ不十分だと言ったほうが良いと思います。例えば、病名を知っているかどうかということの調査で、統合失調症はまだ十分に知られていないということもございますし、こういった状態を呈している方がいますとケースを提示して、これはどういう病気でしょう、と問うたときに、やっぱり統合失調症が、一番正解が低いですね。それからいろんな形で、偏見の問題を調査されますと、やっぱり統合失調症に対する偏見は強いということもございますし、社会的に十分理解、あるいは認識されているとは言えないと思いますね。」

●統合失調症は身近な病気

「統合失調症という病気は、すべての方がなるわけではありませんけれども、かなりの方が、何割かの方がなってもおかしくない病気でもあるんですね。それから、病気になった方とみなさんが一緒にいらっしゃっても実はほとんど気づかない。知らないでいると、ある場合には怖い病気ではないかと誤解をされる病気ですけれど、そうじゃないんですね。まったく私共と同じ方が心の中で悩んでいる病気なんですね。ですから、まず統合失調症の方をぜひ身近かに知っていただきたいと思いますね。そうしますと皆さんの持っている偏見の大部分は消えてしまいます。で、むしろサポートしないといけない方々なんですね。」

<<  1  2  3  4  5  6  7  8  >>